/api/backtest ・ /api/vol-backtest ・ /api/pead当サイトが公開している決算ボラティリティ予報の設計根拠を示すため、日経225採用銘柄の過去2年の決算を対象に、株価データだけを使って何が予測でき、何が予測できないかを測定しました。結論は次の3点です。
結論「決算をまたいで持ち越すべきか」は個人投資家にとって身近な判断です。決算翌日には10%を超える値動きも珍しくなく、その一回で損益が大きく決まります。
一方で、この判断を支える根拠を数字で示した検証は多くありません。「good決算なら上がる」「良い決算が出た銘柄は買われ続ける(PEAD)」といった説明は流通していますが、日本株の実データで、しかもその時点で入手できた情報だけを使って確かめた結果はあまり見かけません。
RegimeNoteは決算カレンダーで予報を出しています。その予報が何を予測し、何を予測しないのかを説明する責任があると考え、自分たちの手元データで検証した結果をそのまま公開します。うまくいかなかった検証も含めて載せています。
日経平均株価の採用銘柄 225社すべて。決算発表日はTDnet(適時開示情報閲覧サービス)に提出された「決算短信」の提出日、株価はYahoo Financeの日足終値を使いました。訂正短信・開示延期のお知らせ・補足説明資料・ETFの決算短信は除いています。
| 検証 | イベント数 | 期間 | データ源 |
|---|---|---|---|
| 1. 翌日の方向 | 1,864 | 2024-08-14〜2026-08-13 | 決算翌営業日の終値騰落率 |
| 2. 決算後ドリフト | 1,862 | 2024-08-16〜2026-08-13 | 同上+30営業日先までの終値 |
| 3. 変動の大きさ | 1,191 | 2025-02-12〜2026-08-13 | 同上(予報に過去3回以上を要求) |
決算発表日Dの終値から、翌営業日D+1の終値までの騰落率です。日本企業の決算は大引け後の発表が主流なので、株価が反応するのは翌営業日になります。場中に発表する企業では反応の一部しか捉えられていません(この限界は8章に記載)。
過去データの検証で最も起こりやすい誤りは、その時点では知り得なかった情報を使ってしまうことです。これをやると、実際には再現できない好成績が出ます。今回は「うっかり使わない」ではなく、構造的に使えない形にしました。
月クラスタとは、決算は特定の月に集中するため、同じ相場環境の影響を重複して数えないよう月単位でまとめ直した検定のことです。決算は発表シーズンに集中します。同じ時期のイベントは同じ地合いの影響を受け、30営業日先のリターンを見る場合は観測期間も重なります。この状態で各イベントが独立だと仮定した標準誤差は小さく出すぎ、本当は誤差の範囲のものが「有意」に見えてしまいます。
そこで検証2では、月ごとに集計し直して月単位で検定する方法を併走させました。本文で「月クラスタ後」と書いているのはこの補正済みの値です。
過去の株価反応から翌日の方向を予測するスコアを、4つの因子の加重平均で作りました。決算の中身(増収増益か、市場予想を上回ったか)は一切見ていません。株価の動きだけから作れる指標が機能するかを見るためです。
| 因子 | 重み | 内容 |
|---|---|---|
| a 反応の一貫性 | 40 | 過去の決算翌日騰落率の平均 ÷ 標準偏差 |
| b 決算前の株価位置 | 25 | 決算前20営業日の騰落率(上昇済みは減点) |
| c 同業種の先行反応 | 20 | 先に発表した同業種銘柄の翌日反応の平均 |
| d サンプル信頼度 | 15 | 集計できた過去決算の回数 |
スコアを 傾向A(75以上)〜 傾向D(40未満)の4段階に分け、実際の翌日騰落率と突き合わせました。
| ランク | 件数 | 翌日の平均騰落率 | 勝率 | 平均変動幅 |
|---|---|---|---|---|
| 傾向A | 46 | -2.13% | 37.0% | 5.17% |
| 傾向B | 404 | +0.48% | 51.5% | 4.60% |
| 傾向C | 999 | +0.34% | 50.9% | 4.28% |
| 傾向D | 415 | +0.13% | 47.7% | 4.18% |
スコアの高さと翌日騰落率の相関は -0.018(標準誤差 0.023)で、標準誤差1つ分にも届きません。因子を単独で見ても a=-0.023/b=-0.005/c=-0.034/d=+0.036 と、すべて誤差の範囲でした。重みの配分を8通り(各因子単独、均等配分など)試しても相関は最大0.036どまりです。
表を見ると、最上位の傾向Aが平均-2.13%と最も悪い成績です。「スコアを逆に使えばよい」と考えたくなりますが、そうは判断しませんでした。理由は3つあります。
この結果を受けて、重みをデータに合わせて調整することはしませんでした。相関が誤差の範囲にとどまる状態で数字を合わせにいけば、偶然への当てはめ(カーブフィッティング)にしかならないためです。そして方向の予測を提示すること自体をやめました。
PEADは「決算発表後、好業績の銘柄は数週間から数ヶ月にわたって上昇し続ける」という現象で、海外市場では古くから報告されています。日本株でも成立するなら、翌日の初期反応を手がかりに中期で追随できることになります。
決算翌日の騰落率で全イベントを5分位に分け、反応日D+1の終値を起点に7営業日後・30営業日後のリターンを測りました。同時に、同じ期間の日経平均の騰落率を差し引いた超過リターンも算出しています。
| 分位 | 決算翌日の騰落率 | 30日後(そのまま) | 30日後(市場調整後) |
|---|---|---|---|
| Q1 | -7.54% | +0.43% | -2.81% |
| Q2 | -2.20% | +2.65% | +0.89% |
| Q3 | +0.12% | +3.47% | +0.92% |
| Q4 | +2.47% | +2.82% | -0.19% |
| Q5 | +8.65% | +2.76% | +0.39% |
そのままの数字を見ると、全分位がプラスで全体平均は+2.43%です。これだけ見れば「決算後は上がる」と読めます。しかしこれは検証期間中に日経平均が上昇したためで、市場調整すると全体平均は-0.16%になり、ほぼ消えます。生のリターンで判断してはいけない、という典型例でした。
PEADが成立するなら、上の分位ほど成績が良い(単調な)関係が出るはずです。実際はQ5が中間群を下回りました。30日後の超過リターンで見ると、Q5は説明変数の取り方を3通り変えても +0.39%/+0.03%/-0.68% で、いずれも中間のQ2・Q3(それぞれ+0.89%/+0.92%)に及びません。
Q5とQ1の差は月クラスタ後も t=+2.1/+2.2/+1.4 と統計的には残りますが、これはQ1(急落群)の-2.81%が作っている差であって、Q5が上昇しているわけではありません。「勝った銘柄を買い持ちする」根拠にはならないということです。
PEADは情報がゆっくり織り込まれる現象なので、効果は時間とともに累積して大きくなるはずです。ところが実測では、相関のt値は7日後が +5.2/+4.2/+2.5、30日後が +2.6/+2.3/+1.5 と、短い期間のほうが強く出ました(説明変数3通りすべてで同じ向き)。これは仮説と逆で、数日で終わる短期のモメンタムと解釈するほうが自然です。
以上から、依頼された仮説「業績が良かった銘柄は中期的に上昇し続ける」は検出できませんでした。この結果を受けて、ドリフトを使った機能は実装していません。
なお本検証は株価データのみを使ったものです。決算短信の中身(利益の伸び、ガイダンスの上方修正など)を読み込んだ分析については検証していません。業績そのものを評価すれば別の結果になる可能性は否定できず、ここで示したのは「株価の動きだけからは読めない」という範囲の結論です。
方向が読めないなら、何なら読めるのか。調べたところ「どれくらい動くか」には明確な持続性がありました。過去の決算で大きく動いた銘柄は、今回も大きく動きます。相関は +0.308(標準誤差0.025、n=1,639)で、標準誤差12個分に相当します。
過去の変動幅が小さい方から3分の1のグループは今回も平均3.09%の動きにとどまり、大きい方から3分の1のグループは平均6.18%動きました。およそ2倍の差です。
予想変動幅は「過去の決算翌営業日の騰落率の絶対値の平均」です。当初は外れ値に強い中央値を使う設計でしたが、実測では平均のほうが誤差が小さく(3.06% vs 3.15%、t=2.9)、平均を採用しました。騰落率の絶対値は右に裾を引く分布なので、中央値は次の1回を系統的に低く見積もってしまいます。
予報帯には落とし穴がありました。当初は「過去実績の四分位範囲」をそのまま帯にしたのですが、実測の的中率は30.6%しかありませんでした(理論値50%)。「過去の分布の中央50%」は「次の1回が落ちる区間」ではないためです。そこで実測と予報の比の分位点から帯を作り直し、前半のデータで較正して後半で検証しました。
| 指標 | 実測 | 目標・意味 |
|---|---|---|
| 予報帯(約50%)の的中率 | 50.2% | 目標50%。50%に近いほど較正が正しい(高いほど良い指標ではない) |
| 広い帯(約80%)の的中率 | 81.0% | 目標80% |
| 平均絶対誤差 | 3.06% | 予報値と実測変動幅の平均的なズレ(実測の平均変動幅は4.59%) |
| 予報値と実測の相関 | +0.357 | 方向の相関-0.018と対照的 |
つまり方向は読めないが、大きさは読める。RegimeNoteの決算カレンダーが方向を出さず予想変動幅だけを出しているのは、この検証結果にもとづく設計です。予報と実測の突き合わせは答え合わせページで1件ずつ公開しています。
検証結果から素直に言えることを、事実の含意として3点挙げます。いずれも特定の売買を勧めるものではありません。
今後の再検証は次の方向で考えています。①下方向(急落後の継続)だけに仮説を絞り直す — 唯一符号が一貫していたのがQ1だったため。②業種・サイズを調整した超過リターンで測り直す。③期間を延長してサンプルを増やす。結果が変われば、このページを更新します。
本レポートの数値は当サイトの検証用APIがそのまま返しているものです。第三者が同じ手順で確かめられるよう、算出元を公開しています。
/api/backtest(ランク別成績・相関・因子別の寄与。?w=40,25,20,15 で重み配分を変えた再集計も可能)/api/vol-backtest(帯的中率・平均絶対誤差・サンプル数別)検証2(ドリフト)は実装判断のための測定として実施したもので、結果が「検出できず」だったため機能化していません。