出来高の異常は何を予告するのか — 103,864件の検証
公開 2026-08-16 / 対象: 日経225全銘柄 / 期間: 2024-09-19〜2026-08-13 / 検証者: RegimeNote運営事務局
データ期間2024-09-19〜2026-08-13
対象・N日経225全銘柄の日次観測 / 103,864件
結論翌日の変動の大きさは予測できた(Q5 2.09% vs Q1 1.41%・月クラスタ後 t=+4.4)。方向は予測できず(相関 +0.000)
最小検出可能効果Q5−Q1 の変動幅で ±0.06〜0.26pt(月クラスタ補正後)この検定設計(サンプル数・クラスタ補正・|t| ≥ 2)で見える下限です。これより小さい効果は、存在しても検出できません。「差が出なかった」は「効果がゼロ」ではありません。
使用API/api/anomaly-backtest ・ /api/anomaly
本記事の数値は検証日時点のものです。当サイトのデータは毎営業日更新されるため、時間の経過とともに最新のAPI応答とは差が生じます。四半期ごとに掲載数値と結論を最新データで再検証し、結論が変わった場合は本文を改訂して記事末尾に改訂履歴を残します。
「今日は出来高が普段の3倍だった」——この事実は、翌日の何を教えてくれるのでしょうか。
日経225の全銘柄・約2年・103,864件で検証しました。
当サイトの恒久ルールにもとづき、指標を公開する前に必ず行う測定です。
結論
- 翌日の「値動きの大きさ」は予測できました。出来高が普段の1.8倍だった銘柄群は翌日 2.09% 動き、0.6倍だった群は 1.41% でした。月クラスタ補正後も差は有意です(t=+4.4)。
- 翌日の「方向」は予測できませんでした。出来高異常度と翌日騰落率の相関は +0.000。文字どおりゼロです。
- これは3本目の検証レポートで、初めて「予測できた」という結論になりました。ただし予測できたのは大きさだけで、そのことの意味は最後の章で詳しく書きます。
1. 何を検証したか
各銘柄・各営業日について、次の指標を計算しました。いずれも「当日の値 ÷ その日より前の20営業日の平均」で、当日を基準窓に含めていません。
- 出来高異常度 … 当日の出来高 ÷ 過去20営業日の平均出来高
- 売買代金異常度 … 当日の売買代金 ÷ 過去20営業日の平均(売買代金は終値×出来高の近似)
- ボラティリティ異常度 … 当日の値幅 ÷ 過去20営業日の平均値幅
- セクター乖離 … 銘柄の前日比 − 所属業種の中央値
これらの値で全データを5分位に分け、翌日のリターン(方向)と翌日の値動きの大きさ(方向を無視した絶対値)の両方を測りました。日次データは同じ時期のイベントが相関するため、月ごとに集計し直す補正(月クラスタ)も併走させています。
2. 結果:大きさは予測できる
| 指標 | Q1の翌日変動 | Q5の翌日変動 | Q5−Q1(月クラスタ) | t値 | 方向の相関 |
| 出来高異常度 | 1.41% | 2.09% | +0.54% | +4.4 | +0.000 |
| 売買代金異常度 | 1.44% | 2.06% | +0.53% | +4.9 | -0.003 |
| ボラティリティ異常度 | 1.55% | 1.95% | +0.30% | +2.4 | -0.007 |
| セクター乖離 | 1.92% | 2.01% | +0.10% | +2.1 | +0.004 |
Q1=異常度が最も低い群、Q5=最も高い群。各群 約20,772件。「翌日変動」は方向を無視した騰落率の絶対値の平均。
出来高異常度で見ると、分位が上がるにつれて翌日の変動が単調に大きくなります。
| 分位 | 出来高倍率 | 翌日リターン | 翌日の変動の大きさ | 20営業日後の超過 |
| Q1 | 0.58 | +0.13% | 1.41% | -0.60% |
| Q2 | 0.76 | +0.12% | 1.47% | -0.25% |
| Q3 | 0.91 | +0.13% | 1.55% | -0.29% |
| Q4 | 1.11 | +0.13% | 1.68% | -0.20% |
| Q5 | 1.79 | +0.12% | 2.09% | -0.03% |
翌日リターンは全分位でほぼ横ばい(+0.13%〜+0.12%)なのに対し、変動の大きさは 1.41% → 2.09% と約1.5倍に広がります。方向は動かず、振れ幅だけが動くという形です。
これは当サイトが決算の検証で見つけた性質と同じ構造です。決算では「過去に大きく動いた銘柄は今回も大きく動く」(相関+0.308)が確認されており、出来高の異常でも同じことが起きていました。
3. 結果:方向は予測できない
出来高異常度と翌日騰落率の相関は +0.000 でした。分位別の翌日リターンも +0.13%〜+0.12% とほぼ横ばいで、出来高が急増した銘柄が翌日上がりやすい/下がりやすいという関係はありません。
ひとつ注意が必要な結果があります。ボラティリティ異常度については、方向の相関が -0.007 で「統計的には有意」と出ます。しかし相関の値そのものが実質ゼロで、分位間の差も0.1%台です。103,864件という大標本では、実用上まったく意味のない差でも統計的有意になります。統計的に有意であることと、使えることは別物です。当サイトはこれを予測力とは呼びません。
4. 出来高急増を3つに分ける
出来高が普段の2倍以上に急増した銘柄を、株価の動きで3つに分類しました。
| 類型 | 件数 | 翌日の変動 | 急増なしとの差 | t値 | 20営業日後の超過 |
| A 買いが集中(+1%以上) | 2,021 | 2.33% | +0.74% | +10.2 | +1.02% |
| B 売りが集中(-1%以下) | 1,504 | 2.57% | +0.67% | +4.6 | -0.57% |
| C 需給の入れ替わり(±1%未満) | 739 | 1.79% | +0.31% | +2.5 | +0.18% |
| (出来高急増なし) | 99,600 | 1.61% | 基準 | — | -0.30% |
Cが最も見落とされやすい類型です。株価がほとんど動いていないため、値上がり率ランキングにも値下がり率ランキングにも出てきません。出来高ランキングに載ったとしても「なぜ載っているのか」が分かりません。
しかしCも、出来高急増がなかった銘柄(1.61%)と比べて翌日は 1.79% と有意に大きく動いています(月クラスタ後 t=+2.5)。株価が動かないまま大量の売買が成立したという事実は、翌日の変動を予告しています。A・Bほどではありませんが、無視できる差ではありません。
なおCは739件と3類型で最も少なく、1営業日あたり平均1〜2銘柄程度です。当サイトではA・B・Cを同列に並べ、Cが埋もれないようにしています。
5. この結果をどう読むか — 予測できたからこそ書いておくこと
これは当サイトの検証レポートで初めて「予測できた」という結論になったものです。だからこそ、その意味を過大に受け取られないよう限界を明記します。
- 予測できるのは「変動の大きさ」であって、方向ではありません。相関は+0.000で、どちらに動くかについて本検証は何も言えていません。
- 大きく動くと分かっても、それが利益になるとは限りません。方向が分からない以上、変動の大きさは機会であると同時にリスクでもあります。同じ「大きく動く」でも、持っていれば損失になり得ます。
- 差の大きさは+0.54%です。Q5とQ1で翌日の変動が 1.41% と 2.09% ——この差が実用上どの程度の意味を持つかは、読者ご自身の判断です。売買コストや保有期間によって評価は変わります。当サイトは「有意に差がある」と言えるだけで、「儲かる」とは言いません。
- 検証期間は約2年です。この間の相場環境に依存した結果である可能性があります。相場環境が変われば結果も変わりえます。
当サイトはこの指標を「今日の異常を発見する」用途で表示しています。方向の判断材料としてではありません。
6. 限界と技術的な注記
- 値幅は|前日比|で代用しています。保存しているのが日次の終値と出来高のみで、高値・安値を持たないためです。日中の値幅を使えば結果は変わりえます。
- 売買代金は終値×出来高の近似です。データ源が売買代金そのものを提供していないためです。
- 寄与異常度は検証の途中で廃止しました。日経平均への寄与は「係数×値幅」で、係数は銘柄内で定数のため、比を取ると係数が約分されて消えます。実測でも分位平均がボラティリティ異常度とほぼ一致し([0.14, 0.43, 0.79, 1.27, 2.71] vs [0.14, 0.44, 0.79, 1.29, 2.73])、独立した情報を持たないことが確認できました。
- 対象は日経225に限られます。20日平均売買代金の分布は下位10%でも約20億円あり、低流動性によるノイズはほとんど生じません。小型株では別の結果になる可能性があります。
- 閾値を探索していません。5分位という切り方も、3類型の閾値(2倍・±1%)も固定し、データに合う値を探すことはしていません。
7. 再現方法
本レポートの数値は /api/anomaly-backtest がそのまま返しているものです。当日の算出結果は /api/anomaly で確認できます。
改訂履歴
2026-08-16 公開(初版)
ご確認ください
本レポートは過去データの集計結果であり、将来の株価を予測・保証するものではありません。
本レポートは特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
検証で確認できたのは「翌日の値動きの大きさ」であり、方向については何も示していません。
当サイトは金融商品取引法に基づく投資助言・勧誘を行うものではありません。
投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。